SAR衛星によるインフラ施設モニタリング 平滑面における解析精度の向上

NEEDS

様々なインフラ施設の観測を可能に

高度成長期に建設された膨大なインフラ施設の老朽化に伴い、日本のインフラ施設の点検・管理費は年間約6,250億円(注1)にものぼると推計されます。これらの膨大なインフラ施設を人力で維持管理することは安全性やコスト面で大きな課題であり、技術導入による効率化が求められます。こうした状況において、SAR衛星を活用した変動量解析手法は、観測対象の微細な変動を検知することが可能なため、インフラ施設の継続的なモニタリングへの活用が見込めます。またSAR衛星の観測幅は一般的な観測で50kmあり、広大な地域を一括で観測することができるため、大規模なインフラ施設のモニタリングにおいて、効率化、省力化につながります。

  • 注1出典:2020年版 次世代インフラ維持管理技術・システム関連市場の現状と将来展望 株式会社富士経済

SOLUTION

微細な変動を抽出可能

鉄塔解析事例
空港解析事例:測量結果
空港解析事例: SAR解析結果

SAR衛星を活用したインフラ施設の変動解析では、地表面に照射されたマイクロ波の反射波を取得し、別時期に取得したデータとの位相差によって地表面変動量を算出します。この解析手法は干渉解析と呼ばれ、長期間積み重ねたデータを用いて時系列的に干渉解析を行うことで、より高精度に変動量を抽出することが可能となります。抽出できる変動量の値はマイクロ波の波長に依存しており、数mm~数cm単位で変動を捉えることが可能です。またSAR衛星から照射されるマイクロ波は雲を透過するため、雨天時や夜間においても同じ条件で観測ができ、継続したモニタリングに適しています。

POINT

解析上の工夫

SAR衛星を活用した変動解析は、マイクロ波の反射特性により平面構造物からはマイクロ波の反射を得にくいという特徴があり、空港など平滑面を有する施設においては、従来手法での解析が難しいという弱点がありました。

平面構造からはマイクロ波の反射を得にくい

そこで平面構造を有する施設の解析を向上させるため、①平滑面におけるデータの高密度化、②リフレクタの活用による精度向上の二つを実証しました。

①SAR解析データの高密度化:平滑面からの微細な反射波を精度よく抽出する手法を確立することで、平滑な面状施設の観測密度を向上させました。

②リフレクタの活用による精度向上:簡易リフレクタはSAR衛星のレーダー波を衛星方向に安定して反射することが可能です。解析時に任意で与える基準点の精度が解析精度にも影響するため、良好な反射が得られる既知点やリフレクタを解析基準点とすることで、解析の精度を向上させます。簡易リフレクタで検証を行ったところ、明確な反射を確認することができました。リフレクタの小型化などの改良を行うことで、様々な施設への適用が可能です。

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