交通の課題をMaaS技術で解決し、未来の可能性を多国籍なパートナーシップから創造する
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CHALLENGE
現状や課題を熟知したインドネシアのジャカルタで、交通の課題を解決する新事業を推進
これまで、日本工営は「海外技術協力の父」と呼ばれた創業者の久保田豊の時代から続く事業の流れを受け、ODAなど数多くの海外政府案件を担当してきました。しかし、最近では途上国と呼ばれた国々の開発の手法や選択肢が増えたことで、従来のアプローチでは競争力を示せなくなってきています。そこで私たちは、創業時からの精神を受け継ぎながらも、次世代を見据えた新事業の創造を始めました。
昨今の時流の中で、特に解決へのニーズが高い課題のひとつに「環境問題」が挙げられます。さまざまな切り口からアプローチができる課題ですが、都市づくりやインフラ構築に従事してきた私たちは、この課題解決に交通を切り口としたサービスを提供するところに大きな事業化の可能性を見出しました。ビッグデータを用いて利便性の向上や渋滞の緩和を実現し、排気ガスの抑制から環境問題の解決を図る事業をインドネシアのジャカルタでスタートさせています。
日本工営にとってインドネシアやジャカルタは、とてもつながりが深い場所です。2019年3月に開通したジャカルタ都市高速鉄道(MRT南北線)も私たちの実績のひとつです。この時も、渋滞の緩和が課題解決のテーマでしたが、現地を深く知る者として、そこからさらに押し進めた構想を持ち込み、さまざまな提携先・協力企業とともに新しいジャカルタの交通を生み出そうとしています。時代は車中心の社会から、人が中心の社会へと変化しています。世界的な動きを見ても、電気自動車の導入や、車そのものの保有を減らすための施策がトレンドです。そして、次世代型の都市に求められるものは、何よりも持続可能性です。
SOLUTION
MaaSからのビッグデータを活用した都市の交通基盤をつくる
2016年にフィンランドで始まった実証実験から、世界に広がったMaaSという概念があります。Mobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)の頭文字を取った略語で、日本語に翻訳すると「サービスとしての移動」となります。それまでは交通事業者ごとに独立していた情報発信や予約・決済などを一元化したもので、利用者は月々の定額料金を支払うと、鉄道やバスだけではなく、タクシーやシェアサイクルなどのあらゆる移動手段を含めたトータルなソリューションがスマートフォン上でシームレスに提供されます。結果、交通の最適化から渋滞を緩和し、環境負荷を低減できるMaaSを、世界中の国々が前向きに検討をし始めました。その中でも、渋滞が深刻なジャカルタは、対策が急務な大都市のひとつです。MaaSの概念を取り入れて、都市交通に関連するさまざまな課題解決を目指す事業を日本工営は行っています。

事業を進めていく上でパートナーシップを提携したのは、現地プラットフォーマーやシステムインテグレーターなどです。膨大なデータから個人情報を守りながら必要なデータを抽出し、顧客の課題解決などのためにデータに付加価値を加える作業は、専門家の領域です。私たち日本工営が担当するのは、提携企業が整理したビッグデータを用いて新たな価値を提供することです。想定顧客は、付加価値を持つデータに裏付けされた施策を実践していく都市や政府などの行政、不動産や交通事業者などの民間企業です。これまでは、1年や2年かけて調査を行い30年後の状況を予測して10年から20年単位の計画を練っていましたが、現在はリアルタイムで情報が蓄積されて解析されるため、何よりもスピードが求められています。そのために、既存の仕組みやソフトウエアと新技術の間の整合性をうまく取ることも、私たちの役目です。新技術を融合しながら事業を進めていくうちに、例えばこれまでなら年間の傾向しか見えてこなかった予測も、豪雨や予期せぬアクシデントが起こったときのことがシミュレーションできるようになりました。MaaSの技術と、ジャカルタの独自性を掛け合わせて、オーダーメイドの手法が、今まさに進行中です。
POINT
豊富な経験と確かな技術力に加えて、中立的な立場と多様性がアドバンテージ
ビッグデータを用いた課題解決の事業には、さまざまなプレイヤーが集結しています。通信会社やIT関連の企業が数多く見られますが、日本工営はそれらの企業群とは一線を画した存在です。コンサルタントとしてのバックグラウンドを持つ日本工営が上流工程に関わるメリットは、中立的な立場で、しがらみがなく、最適な技術やパートナー企業を選択できることです。つまり、ビジネス的な制約がほぼない環境で、ジャカルタ市に必要な施策の提案が可能です。また、これまで海外技術協力のフィールドで長く途上国・新興国と関わってきた歴史から、他の企業にはないアイデアや対応力を積み重ねてきました。
このジャカルタの事業は日本工営シンガポール事務所が先頭に立って行っていますが、人種の坩堝(るつぼ)と呼ばれる同国に拠点を置く良さが如実に出ています。グローバルなオープンイノベーションの環境で、社内外の区別なく多くの人を巻き込みながら新しい技術やビジネスモデルを生み出してきました。2022年夏現在、本事業に中心的に関わっているメンバーの国籍は7か国です。さまざまなバックグラウンドを持つメンバーや協力企業が、それぞれの価値観と技術を持ち寄ることで、必然的に世界に通じる事業が立ち上がっています。人材も多彩で、フィンランドでMaaSを立ち上げた者や、シンガポールでのMaaSスタートアップの元CEO、英国のITソリューションの知見を持つデータサイエンティストなどが在籍しています。それぞれの得意分野を掛け合わせながら、多角的に自らの構想を検証できる体制が整っています。
このチームの中に掲げられている標語は、日本工営の長期戦略にある「Think globally, Act locally」。プロジェクトを開始した当時、メンバーが苦労したのは日本工営の知名度が低いことでした。海外技術協力の案件ではブランドとも思えた社名が、国際協力事業のエコシステムの外では無名のものになり、1からのプロモーションとなりました。それでも、ここまで走り続けてこられたのは、スマートシティを実現したいという一人ひとりの強い思いがあったからこそです。そして、グローバルに考えながら、市民の方々に満足いただくための、我々の価値とは何かを追求してきたからに他なりません。
その土地に暮らす人たちが、より快適な暮らしを手に入れるために、日本工営はこれからも「そこに必要な次世代型の事業」を創造しながら走り続けていきます。